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2.11 『魔法少女育成計画 F2P the STAGE』 おんがくのはなし

音楽チームは初日の公演を観に行かせていただきました。
ハンカチ持っていってよかったです。

朗読劇第2弾、第3弾に引き続き、今回も音楽を担当させていただき大変光栄です。

ブリッジ含め全43曲新曲でした。
それとは別で朗読劇の音楽も使われていたのですが、気づいていただけたでしょうか。

今作の音楽チームは、
おなじみの阪田芙優さん。
はじめましての桑原遥さん、
そして小林の3人でした。

今回も安心感と緊張感の中で、夢中で作らせていただきました。
ご観劇いただきました皆様、関わってくださった方々、そして音楽チームのお2人、
本当にありがとうございました!

今作でのキャラクターと楽器のイメージがありました。

一部ですが、

アルマはハープ。
ララルーナはレジスタンスnリーダーの1st ヴァイオリン。
ステラ・ルルは性別が男の子ということもあり2nd ヴァイオリン。その中でも低めの音域を意識しました。
セラセラは少し遠くから支えるヴィオラ。
メルティペインはチェロで、低弦の怒り。
ウェンはクラシックで高貴なチェンバロ、エルジーナと一緒だとピアノ。
ファン・リート・ファンにはヴァイオリンで二胡のアプローチを。
魔法の国は、ビブラフォンやグロッケン。

全ての場面というわけではないのですが、軸はこのような感じにしました。

いくつか曲をご紹介させてください。

・M0
会場のロビーで聴いていただいていたM00から綺麗に繋がるように、田邊さんと調整を重ねた曲です。
アルマの写真で、彼女とそのお花のその優しい絵がとても印象的だったので、イントロで彼女の表情とお花が徐々に朽ちて、そして堕ちていく感じ、そしてまほいくF2Pの世界へ、という流れを作りました。

・M1
アルマの独白。アルマのテーマです。
ハープで、彼女の音をつくりました。優しい、少したどたどしい、でも美しい音。瞳は、まっすぐ、前を。

・M2
オープニングに繋がる場面の曲です。
こちらも田邊さんと何度も細かい調整を重ねて作った曲です。
残酷さの中に魔法少女たちのかわいらしさのエッセンスを足して、良い答えが出せたかなと思います。
初日に観劇させていただいたのですが、ここの演出のかっこよさに泣きました。

・M12
細かくは最後の方に書きましたが、この場面だけはピアノしかないと思いました。
(ウェンの中にいる)エルジーナのテーマです。
途中から、慰めるようにアルマのテーマが入ってきます。
ストリングスを後半本当に薄くしか入れなかったのは、大袈裟にしたら壊れてしまうのはもちろん、この2人の不安定さは、当日の会場の空気が音になるだろうと信じていたからです。

・M21.5
セラセラのテーマです。アルマと語り合うシーンです。
ソラソラソ〜と波打つようなメロディなのですが、もう名前とその立場からこのメロディにしました。ヴィオラという支える役割が多い楽器にしたことも、その理由です。
気づくと歌ってしまうくらい個人的に好きです。

・M22
エイミーのテーマです。朗読劇のときに、まほいくの世界観を表現する楽器として1つハンマーダルシマーを使っていて、そこから日本の音階を入れてみました。
各キャラクターのテーマ曲は脚本をいただく前に漫画を読んで全員分作っていたのですが、ここでしっかり生きたかなと思います。

・M28
M2のゆったりしたテンポのバージョンです。
決意、覚悟の中にも、きっと誰しもが持っている心の揺らぎが、曲の隙間に見える気がします。雨の中に溶けていくように、静かに、静かに…アウトロを作りました。

・M29
セラセラとララルーナの場面です。
会話するように、影、希望、これからのこと、見えているもの、見えないもの、優しさ、ゆっくりかき混ぜていくように作りました。

・M35
クライマックスシーンの曲です。
全ての魔法少女の想いを、整理して、場面ごとに大切に詰め込んで、走馬灯のように、だけど一歩一歩噛み締めながら、絶望という箱の中でも少女たちがそれぞれの希望を失わずに戦えるような音を目指しました。私自身泣きながら作りました。そしてこれを作って阪田さんにプロジェクトデータを送ったその夜に胃腸炎になりました。
後半にはテーマ曲も入っていて、阪田さんのヴァイオリンが本当に美しく歌ってくれました。それが美しく響く中で、木管楽器や金管楽器がその命を優しく抱き上げるように入っていたり。
キャストさんたちの演技、最高でしたね…瞬きできませんでした。

F2P the STAGEの景色づくりについて。

遠藤先生、マルイノ先生、柚木先生、田邊さん、そしてお客様が大切にされているものが一体何なのかを私なりに巡らせながら、まほいくの世界をごくごく飲み込みながら、時に舐めながら(アルマちゃんです)、作らせていただきました。

まほいくの音楽を作らせていただくのは朗読劇含めて今作で3作品目なのですが、今回は朗読劇版との違いを出すために、普段メインで使っているピアノをできるだけ使わずに、全体的に楽器数も多くして厚みを出し、私と阪田さんでオーケストラ編成で編曲しました。
また、今回はもう一つ大きな挑戦があり、阪田さんに戦闘曲の作編曲をお願いしました。彼女には、ファン・リート・ファンは二胡をはじめ中国の楽器を、エイミーは琴や尺八、太鼓をオーケストラ編成の中に組み込む、ということをお願いして、あとはモチーフと雰囲気をお伝えして、お任せしました。

彼女との音づくりで個人的にいちばん盛り上がったのは、阪田さんにヴァイオリンで二胡(中国の楽器)のアプローチができないかと相談したところ、「これはまほいくだ!」というとても美しい演奏データがすぐに送られてきて。本当にすごい人だなと思いました。
クレジットに名前こそ載っていないものの、私と同じ景色を見つめながら大切に作ってくれました。心から感謝しています。

音楽を作る上で大変だったのは、まほいくの世界は本当に広く深く濃い…ので、制作していてどんどん透明さを失っていくし、リセットできなくなってくる。その泥の沼に沈んでいく感覚が、とても怖くて。けれど、途中からそんな状況を徐々に客観視できるようになってきて、そこからその中に咲く花の美しさを必死でなんとか見つけるように、ひたすらに獲物を狩り続けるように…そんな感覚で音を選び続けていました。

今作の制作を通して、阪田さんと桑原さんのおかげもあり、自分なりの器の磨き方がやっと見えてきたかも、と感じました。

これからも、心をめいいっぱい響かせて、大切に作っていけたらと思います。
本当にありがとうございました。


おまけの話。

もし楽器やコードを鳴らせるアプリをお持ちの方がいましたら。
朗読劇のスノーホワイト育成計画のコードはF#m、double shadowは Fm。そして今作はテーマはFmですが、お話が始まってからはDmが多めになりました。
もしまほいく舞台の音楽を思い出したくなったら、FmかDmをジャーンと鳴らしてみてください。ちょっと匂いが出てくるかもしれません。

ありがとうございました。

小林未季

9.20 朗読劇『青野くんに触りたいから死にたい』の音楽づくりのはなし

6月に原作を買って読ませていただいてから、少し頭がおかしくなりました。
それくらい素敵な作品です。
音楽を担当させていただけて光栄でした。

音楽チームをご紹介します。

阪田芙優(さかたふゆ)さん
おなじみの阪田さん。
今回は作編曲をメインに、そして素敵なヴァイオリンとヴィオラを弾いていただきました。
開演前に流れていた優里ちゃんと青野くんのたどたどしいピアノの音楽も彼女がつくってくれました。
いつも本当にありがとう。

谷崎舞(たにざきまい)さん
素敵なヴァイオリンとヴィオラを弾いていただきました。
一緒にゲネプロも観劇できて嬉しかったです。

小笠原一馬(おがさわらかずま)さん
楽しいパーカッションの演奏をお願いしました。

今作の楽器と登場人物のイメージは、
優里ちゃんが1st ヴァイオリン
青野くんが2nd ヴァイオリン
黒青野くんがヴィオラ
でした。

今回は全曲通して、常に”空白”と向き合っていたように思います。

いつも以上に一音一音の存在感が大きく感じられて、素敵な役者の方々の台詞の後ろで、時にやわらかく、時にじっとりと共存できるように、音を選びました。

ホラーの場面では、じりじりした音やごうごうした音も入れたり、
壊れたピアノの音とピアノの音を混ぜたりもしました。

黒青野くんが優里ちゃんのフリをして美桜ちゃんの家に入ろうとした場面の音は、ヴィオラでなくヴァイオリンで黒青野くんのメロディを弾いてもらいました。

翠ちゃんはヴァイオリンのチューニングをずっとし続けている音にしました。
いつまでもチューニングできずに苦しんでいるように感じたからです。

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今作はプレッシャーとのたたかいでした。
ですが、原作者の椎名うみ先生のSNSのコメントを拝見して、とても安心しました。
今回いちばん大切にしたい人でした。

それから、曲数が過去最高の65曲でした。
このままではおばあちゃんになった時に体が持たないので、
阪田さんと話し合って、人を増やそう、と決めました。

いろいろ大変だったけれど、
優里ちゃん役の生駒里奈さんのおっしゃったように「仏縁」を感じられる作品でした。
原作の漫画の13巻の発売が待ち遠しいです。

ありがとうございました!

5.13

育児、仕事(今は機材とミックス)、体調管理、全てにおいて試行錯誤の連続。
ひとまず「どうやら間違った方向に進んでいるわけではない」ことだけはわかっている。

優しい心を失いそうになる出来事の連続だったけれど、それも少しは落ち着いてきたように思う。(友人や仲間のおかげ)

先週から自分の歌の曲に取り組んでいて、新曲づくり、アレンジ、レコーディング、全てのスケジュールを慎重に調整しながら進めている。

朗読劇『はなしぐれ』のアフターイベントに向けて、全ての楽曲をミックスし直す。
センシティブな場面の曲では、阪田芙優の胃がキリキリするようなアレンジに心を満たされつつ、その苦しさと美しさを引き出すことだけを考えてミックスする。

また書きます。

3.28 舞台 最果てリストランテの音楽づくりのはなし

こちらも遅くなってしまったのですが、音楽制作のおはなしを。


「三途の川を渡る前、最後の晩餐をとるためのレストラン。」(公式サイトより)
とても素敵なお話でした。
音楽を担当させていただけて幸せでした。


音楽制作にあたり、メロディは素直に生まれたものの、
作品の中で音楽の存在感が出すぎないよう、実際に曲をつくりはじめてから演出の田邊さんと丁寧に擦り合わせを重ねてつくっていきました。


全16曲の中で何度も出てきたM0(OP)のモチーフ。
家族がテーマのひとつなのですが、お話に合わせて”いい家族”にならないよう、俯瞰したかたちでテーマをつくりました。
そして、”その人”ではなく、その人たちを含めた”景色”が音楽になるように。
三途の川と小さなレストラン。(もう全て終わってしまった)思い出、そして”あの”扉の先へ行ったら全てが本当に終ってしまうこと。それをそれぞれのペース、器で受け入れていく…そんな景色です。


全ての曲に静かな緊張感があって、空白にも意味がしっかりと生まれやすい楽曲になりました。音楽が意味を持ちすぎないように調整していったこともこの作品だからこそだと思います。


全体を通して登場人物のセリフに寄り添いながらピアノでメロディを奏でました。
いつも以上に一音一音の弾き方、音の選び方で大きく景色が変わってしまうため、
とても薄い硝子を扱うような気持ちでピアノに向かっていました。
弾きながらうっかり涙が出ていたこともありました。


私はゲネプロを観劇させていただいたのですが、客席に入った瞬間から空気が澄んでいるように感じました。

役者さんの熱量も素晴らしくて(あと、みなさん足が長い!)今でも思い出すとあのときの空気感が身体中によみがえってきます。


生きている、ということについて考えたり感じたりするヒントをたくさんもらえた作品です。
本当にありがとうございました。

3.26 朗読劇 魔法少女育成計画 doubleshadow 音楽づくりのはなし

楽曲制作後すぐにコロナにかかってしまい(3回目)、
遅ればせながら昨日、千穐楽の配信のアーカイブを観させていただきました。

素晴らしかった…余韻がすごいです。

配信だと声優さんの表情や衣装の細かいところまでよく見えて面白かったです。
でもやっぱり生で観たかった。

たくさんの素敵な表現に溢れたこの作品の一員になれたこと、とても光栄です。
ありがとうございました。

4/21の夜までは配信のアーカイブを観られるそうです。ぜひ。https://www.openrec.tv/user/mahoiku_rodoku

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今回制作したのは後半の『doubleshadow』の24曲でした。

音楽チームをご紹介させてください。

阪田芙優(さかたふゆ)さん。
今回も編曲、ヴァイオリンとヴィオラの演奏、そしてM15.5(扉を閉鎖する場面)の作編曲もお願いしました。
限られたスケジュールの中で、阪田さんと二人三脚で常に緊張感を持って楽しみながら作ることができました。
いつも私の見えている景色をしっかり受け止めてくれてかたちにしてくれます。
しかもわんこそばのペースで。かっこいい人です。

彼女自身もまほいくのファンということで、編曲の説得力がすごかったです。
彼女も編曲についてのお話を書いているので、ぜひ読んでみてください。https://fusetter.com/tw/prVZtkYL#all

川口直久(かわぐちなおひさ)さん。
M6(高速道路の場面の曲)の編曲と演奏をお願いしました。
ギターかっこよすぎませんか?
いつも丁寧にいろんなことを確認してくれます。かっこいい人です。

作曲とピアノは小林でした。

そして、新しく作らせていただいた楽曲のお話です。

今回も前作に引き続きいろんな楽器を使いました。

ピアノ、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス、ハープ、オルガン、オーボエ、クラリネット、ファゴット、フルート、ホルン、トロンボーン、パーカッション、ドラム、ギター、ベース、パーカッションいろいろ、チェレスタ、音源ソフトのドンドコドンドコというリズム、など。

世界観の軸は前回で既に出来上がっていたので、そこに乗りつつ『doubleshadow』の魔法少女たちの音を探していきました。

今作も楽器にキャラクターを割り当てました。
1st ヴァイオリンは高貴なプフレ。
2ndヴァイオリンはプフレに寄り添うシャドウゲール。
ヴィオラはシャドウゲールになれないジップ。
チェロはジップを支えるエーコ。
オルガンは魔王パム。

前作の曲もいくつかアレンジしたり、ミックスし直したりして、今回もやれることはやり尽くしたかなと思います。

M0(OP)…doubleshadowのテーマ曲。
舞台のスポットライトのような月の光の中で、ひとつの影(ヴァイオリン)がすーーっと伸びていき、途中から2つに分かれていく、そんなイメージです。
実はピアノが”ファソラ♭シ♭ラ♭ソ、ファソラ♭シ♭ラ♭ソ…”というフレーズを繰り返しているのですが、数字で言うと”1,2,3,4,3,2,1,2,3,4,3,2…”となっていて、
今作のキャッチフレーズで「運命の歯車が回り出す」とあったこと、そしてプフレが車椅子に乗っていることから、ぐるぐると回るメロディにしてみました。(コードは進んでいくので、進んでいます。)

マルイノ先生のキービジュアル、今回もデスクトップに表示させていただいていました。素敵すぎる…!

M3…人小路家の邸宅の場面。クラシック曲のバッハのプレリュードハ長調を弾きました。
こういう匂いのする曲を作ろうと思ったのですが、この曲があまりにも完成されすぎていて曲をつくることができなくて、思いきって相談して使わせてもらいました。久しぶりに弾けて気持ちよかったです。

M4…ジップとエーコのテーマ。再会のときの懐かしさ、かわいらしさ、切なさ、まっすぐさ、繊細さ…いろんな角度から見ても馴染むメロディにしてみました。戦闘曲の中にもちょこちょこ出てきます。

M7…プフレとシャドウゲールのテーマ。
ジップとエーコのテーマに比べると少しおどけたかわいらしさになりました。
はじめはプフレのテーマ。「なあ、護?」という感じです。途中から転調して、「はいはい、わかりましたよ。」とついていくシャドウゲールのテーマ。2人で月明かりの中でワルツを踊るように、前半は軽やかに、後半はゆったりと。

M8…ジップとエーコのテーマの木管楽器バージョンなのですが、かわいいはずのグロッケン(鉄琴)の音がこんなに寂しく悲しく響いてしまうなんて、と、驚きました。

M14、14.5…3つあるうちの戦闘曲の2つめ。阪田さんの編曲が素晴らしくて、演出の田邊さんからも「最高です!」の言葉が出た1曲です。

M20…最後の場面の曲です。
前作でも使った曲ですが、少し音のバランスを直しました。
担当させていただいた『朗読劇 魔法少女育成計画』の第2弾、第3弾の音楽の中で、いちばん象徴的な曲になったんじゃないかなと思います。
ピアノとストリングスの曲なのですが、息苦しさ、絶望、虚しさ、嘆き、わずかな希望、少女たちの儚さ、まほいくの世界のあの腹の底から来るむせ返るような感覚…そして物語が続いていく、という感じです。
ストリングスとピアノが綺麗にはまって、魔法少女たちの息が聴こえるような音楽になれたかなと思っています。
あと、曲が切り替わるタイミングと、プフレとシャドウゲールの会話のタイミングに鳥肌が立ちました。

長く愛されているまほいくの音楽を担当するプレッシャーは大きかったのですが、演出の田邊さんはじめ、ご一緒させていただいた方々のおかげで安心して制作に集中させていただき、無事に乗り切ることができました。

アニメの2期も決まっているとのことで、わくわくですね。
改めて、ありがとうございました。

1.30 朗読劇 はなしぐれ 音楽づくりのはなし

朗読劇『はなしぐれ』
吉岡さんの脚本から感じたのは「美しい静けさ」。
それを今回の音楽制作のテーマにしました。

田邊さんより「大人っぽく」とのオーダーがあり、私も脚本を読ませていただき、うん、そうだよね、と思い、つくりました。

所々で弦楽器のピチカートが入るんですが、雨粒です。
セリフも、雨垂れのようにぽつり、ぽつりと感じられるところがあって、一緒に居させてもらいました。

また、ピアノとハープが絡まり合うようなフレーズがあったんですが、それは進と美波を表現しました。ぽろろん、ろん、という感じで。
少しずつ、でも確実に近づいていく2人、です。

今作は全体的にストリングスがしっかり寄り添うことが多かったんですが、それは2人を見守るように雨が煙るのを表現したかったので入れました。
雨の強さや匂い、今作も阪田芙優さんが本当に素敵に編曲してくださいました。
また、ヴァイオリンとヴィオラの演奏も阪田さんで、美しい音をたっぷりくれました。

今回気をつけていたののは、大げさに盛り上げすぎないこと。
このお話の美しい静けさは壊してはいけないと感じました。

いくつか曲の紹介をさせてください。

・M0 テーマ曲。
「ラーソラレーー ラーソラドーー    ラーソラレーミファソラドーーーソーラーー」(楽器をお持ちの方、ぜひどうぞ)4年前に既に決めていたメロディでした。時間が経ったので作り直そうかなと思ったのですが、変えられませんでした。

・M2〜 美波はハープ。進はピアノ。現実の世界の人たち。
マリアはフルート、道留はクラリネット、お兄さんの匂いをこっそり足したくて、時にオーボエが加わったり。(これは田邊さんにも言ってなかったかも)木管楽器は漫画の世界の人たち。

・M8 美波のメロディのピアノ。ラ♭ソシ♭ラ♭〜、彼女の美しい波。メジャーとマイナーを織り交ぜて。
メロディを右手でやさしく弾くだけでやさしい波が生まれる。だから、今回の脚本の「美しい静けさ」を、ここはどうやって表現しようかなと悩んだのですが、うん、やっぱりこれで十分だ、となりました。

・M9 蘭子のテーマ。ここはとてもセンシティブな場面なので、余計な色付けはせず、蘭子が記憶を「淡々と」語る、その心境をイメージして音にしました。弦楽器はヴィオラ。演奏は阪田さんです。

・M11 進と遠藤さん。
遠藤さんの優しくて男気溢れるギターと、進のピアノで。

・M15 13分超え。全ての音に緊張感を持って接しました。

優しい思い出をゆっくり辿っていき、今に向かって膨らんでいく音楽。ヴァイオリンがメロディを綺麗に奏でて誘導してくれるように。ハープも柔らかくピアノと寄り添って。
後半は雨の匂いを思いっきり吸い込んで吐き出すようにつくりました。ちょっと泣きながらつくりました。

・M18 エピローグ 優しく。最後は桜がぽろぽろと舞い散る音。

今回も緊張しながらも楽しく作らせていただきました。
実は木曜日に急性胃腸炎になってしまい本番を観ることが叶いませんでした…
うーん、文字に起こすだけでも悔しい。

音楽のことをSNSに書いてくださった方々、ありがとうございます。
お布団で横になりながら、見つけては励みにしていました。
音を届けてくださった音響の田中さんにも感謝の気持ちでいっぱいです。

2月3日(土)21:00〜 田邊さんと吉岡さんによるはなしぐれ考察会があるそうです。わくわく。

それでは、また。

10.18 朗読劇 魔法少女育成計画 音楽づくりのはなし

今作の音楽を一緒につくってくれたメンバーの紹介、そして音楽制作で大切にしていたことのおはなしをさせてください。

まずは阪田芙優(さかたふゆ)さん。今作はこの人無しには語れません。
主に編曲とヴァイオリン、ヴィオラの演奏をお願いしました。
楽曲数が多いので、彼女にたくさん救われました。
ヴァイオリンとヴィオラの演奏はもちろん素晴らしいのですが、そこだけじゃなく、もともと彼女の人や楽曲に寄り添うエネルギーが本当にすごくて。
話をしていてもやわらかさと芯の強さのバランスが心地よくて。私が伝える抽象的な話も、言葉の先の景色をしっかりと捉えてくれる。そして作業が恐ろしく速い。本当に安心してお願いすることができました。
実際の曲の制作の流れは、事前の打ち合わせで共有していた曲ごとのイメージをもとに、私がピアノで弾いたプロジェクトデータを送って、彼女に編曲してもらうというかたちで進めていました。最後は尺の調整も手伝ってもらいました…女神と呼ばせてください。
とても素敵な方です。
千穐楽を川口さんと3人で観に行ったのですが、第3弾が発表されたときに彼女が泣いていて、私も一緒に嬉しくなって彼女の腕をさすさすしていました。第3弾もがんばります。

川口直久(かわぐちなおひさ)さん。
今作は「青い魔法少女の自己主張」のM8(トットポップのテーマ)の編曲、M16(テロリストが攻めてきたところ)のアコースティックギターの演奏をお願いしました。
私がロックを弾けなくて、その割にこだわりはあったので(面倒くさいですね)、ヒアリングを丁寧にしてくれて作ってくれました。彼自身も作曲家として活動しているので、景色の共有もしやすくて。
何より私のわがままにお父さんのように深い優しさを持って対応してくれます。

大里健伍(おおさとけんご)さん。
「青い魔法少女の自己主張」のM17(バトルシーン)のエレキギターを弾いてもらいました。
私のシンガーソングライターの活動でも一緒に演奏してくれていて、景色を大切に演奏してくれるのでギターの演奏では欠かせない存在です。
今回海外に行ったりして忙しい中でレコーディングしてくれました。
トットポップとしてエレキギターを弾いてもらったのですが、あのテイストの曲にエレキギターを成り立たせてくれたのは彼の力です。センスの塊。アニキって感じです。

小笠原一馬(おがさわらかずま)さん。
「青い魔法少女の自己主張」のコミカルな曲全般とM16のパーカッション演奏、「スノーホワイト育成計画」M11のパーカッション演奏をお願いしました。
小笠原さんとはもう長い付き合いなのですが、今作が今までで一番困らせてしまったかもしれません。M16の制作時、私が電話口で「『チャカポコポン、チャカポコポン、チャカポコ』なんですけど」って言って、なかなか伝わらなくて(笑)。でも、やっぱりそこは小笠原さん。結果、最高の「チャカポコポン」ができました。

以上、今回携わってくれた音楽チームの素敵なメンバーでした。
ありがとうございました!



そして、曲づくりのおはなしです。

1ヶ月弱で50曲近く作ったのかな。
今作の目標は「どこもかしこも美しく」「殻を破りまくる」でした。
その中でいくつかご紹介させてください。

○青い魔法少女の自己主張

M0(OP) …メロディのヴァイオリンが低い位置から高いところまで自由に動きます。ピアノの細かい刻む動きはキラキラと光る宝石。その中でテレポートしながらラピスが低いところから高いところへ自由に跳び回るイメージでした。伸びやかなストリングスは少し強く吹く風。前をまっすぐに見据えている彼女の横顔をイメージして音を作りました。
この曲のメロディがいろんな曲に入っていたのですが、気づいてもらえたでしょうか。

M16…タンゴにした理由は、みんな踊るように戦っているイメージだったからです。
かわいさ、躍動感、疾走感、かっこよさ…詰め込んでみました。

M17…ヴァイオリンはラピスで、エレキギターはトットポップ。途中でメロディが絡みあったりして、たくさんの金管楽器、木管楽器、パーカッションの鍵盤楽器、そしてエレキギターがおもちゃ箱をひっくり返したように転調したり、メジャーとマイナーを織り交ぜて戦いの勢いの緩急を表現したりしました。
もうこの楽器数をひとりでミックスするのはやめようと誓った曲でした。

M18…オルゴールは優しい思い出。
M19…M18の優しい思い出の”過去”からキラキラ輝く夜空の星、そしてその優しい思い出を引き継いだまま強くなった「現在」音はピアノと、ラピスのヴァイオリン。
私の中でふかふかの優しさってFコードなので、たっぷり優しい前向きに。

M20…舞台が始まる前に流れていたラピスのテーマのオルゴール曲です。SNSで音源ほしいって書いてくれてた人がいて、すごく嬉しかったです。

○スノーホワイト育成計画

M0(OP)…スノーホワイトのテーマ。いちばんはじめに作りました。マルイノさんのキービジュアルがすごく素敵で、それをデスクトップに表示してずっとずっと眺めながらイメージを膨らませて作りました。アニメも観て、小説も読ませていただいたのですが、スノーホワイトの眼差しや全身のポーズのしなやかさ、繊細で柔らかい色づかい、そして彼女の境遇をヴァイオリンの高音部で音にしてみました。
曲の前半は雪のようにはらはらと舞う花びらです。
最後に花が咲くっていう、言わないとわからないような、言ったらそんな気がするような、そういう感じです。私はいつもそうですね。
コードをF#mにしたのを阪田さんがすごく褒めてくれて、小説ほとんどのシリーズを読み込んだ彼女が言うなら合ってるんだなって安心できました。

M3(フレデリカのテーマ)…いろんな意味であやしい人なので、ヴィオラにしました。
下から舐めるように見つめる眼差しと、「ああ〜」って言いそうな感じと、キービジュアルのあの紫色の感じを音にしました。吉岡、なんですよね。

M7…ピアノ一本!どうしてわかってくれないの!の言葉を読みながら泣いてしまって、弾きました。

M13〜M15(激しめの戦闘曲)…狂っている!あの女は整っているのに狂っている!!という感じで作りました。ヴァイオリン高音部はスノーホワイト、それを支えるように動くヴァイオリン低音部はリップル、狂ったように低い位置から激しく動くフレデリカのヴィオラ、三者の動きを音にしました。

M17(戦闘の終わり)…フレデリカの狂気を音にしました。これは阪田さんが大活躍の一曲。そして気持ちが弱っているときにあまり聴かない方がいい曲。

本番は素晴らしくて、緊張と感動で身体中に力が入りっぱなしでした。
改めて音楽で携わることができて幸せでした。

ありがとうございました!

8.31

きっと、どこへ行っても「楽しい」と「苦しい」はちゃんと用意されていて。

私が母になって1年がが経って、海から森になった。
透明なままで。

限られた時間の中で、たくさんのいきものと生きていく。


幼い子からお年寄りまで、みんなみんな必死で生きている。


困難もある。
腹を立てず、静かに見守っていく。

透明なままで。