音楽チームは初日の公演を観に行かせていただきました。
ハンカチ持っていってよかったです。
朗読劇第2弾、第3弾に引き続き、今回も音楽を担当させていただき大変光栄です。
ブリッジ含め全43曲新曲でした。
それとは別で朗読劇の音楽も使われていたのですが、気づいていただけたでしょうか。
今作の音楽チームは、
おなじみの阪田芙優さん。
はじめましての桑原遥さん、
そして小林の3人でした。
今回も安心感と緊張感の中で、夢中で作らせていただきました。
ご観劇いただきました皆様、関わってくださった方々、そして音楽チームのお2人、
本当にありがとうございました!
今作でのキャラクターと楽器のイメージがありました。
一部ですが、
アルマはハープ。
ララルーナはレジスタンスnリーダーの1st ヴァイオリン。
ステラ・ルルは性別が男の子ということもあり2nd ヴァイオリン。その中でも低めの音域を意識しました。
セラセラは少し遠くから支えるヴィオラ。
メルティペインはチェロで、低弦の怒り。
ウェンはクラシックで高貴なチェンバロ、エルジーナと一緒だとピアノ。
ファン・リート・ファンにはヴァイオリンで二胡のアプローチを。
魔法の国は、ビブラフォンやグロッケン。
全ての場面というわけではないのですが、軸はこのような感じにしました。
いくつか曲をご紹介させてください。
・M0
会場のロビーで聴いていただいていたM00から綺麗に繋がるように、田邊さんと調整を重ねた曲です。
アルマの写真で、彼女とそのお花のその優しい絵がとても印象的だったので、イントロで彼女の表情とお花が徐々に朽ちて、そして堕ちていく感じ、そしてまほいくF2Pの世界へ、という流れを作りました。
・M1
アルマの独白。アルマのテーマです。
ハープで、彼女の音をつくりました。優しい、少したどたどしい、でも美しい音。瞳は、まっすぐ、前を。
・M2
オープニングに繋がる場面の曲です。
こちらも田邊さんと何度も細かい調整を重ねて作った曲です。
残酷さの中に魔法少女たちのかわいらしさのエッセンスを足して、良い答えが出せたかなと思います。
初日に観劇させていただいたのですが、ここの演出のかっこよさに泣きました。
・M12
細かくは最後の方に書きましたが、この場面だけはピアノしかないと思いました。
(ウェンの中にいる)エルジーナのテーマです。
途中から、慰めるようにアルマのテーマが入ってきます。
ストリングスを後半本当に薄くしか入れなかったのは、大袈裟にしたら壊れてしまうのはもちろん、この2人の不安定さは、当日の会場の空気が音になるだろうと信じていたからです。
・M21.5
セラセラのテーマです。アルマと語り合うシーンです。
ソラソラソ〜と波打つようなメロディなのですが、もう名前とその立場からこのメロディにしました。ヴィオラという支える役割が多い楽器にしたことも、その理由です。
気づくと歌ってしまうくらい個人的に好きです。
・M22
エイミーのテーマです。朗読劇のときに、まほいくの世界観を表現する楽器として1つハンマーダルシマーを使っていて、そこから日本の音階を入れてみました。
各キャラクターのテーマ曲は脚本をいただく前に漫画を読んで全員分作っていたのですが、ここでしっかり生きたかなと思います。
・M28
M2のゆったりしたテンポのバージョンです。
決意、覚悟の中にも、きっと誰しもが持っている心の揺らぎが、曲の隙間に見える気がします。雨の中に溶けていくように、静かに、静かに…アウトロを作りました。
・M29
セラセラとララルーナの場面です。
会話するように、影、希望、これからのこと、見えているもの、見えないもの、優しさ、ゆっくりかき混ぜていくように作りました。
・M35
クライマックスシーンの曲です。
全ての魔法少女の想いを、整理して、場面ごとに大切に詰め込んで、走馬灯のように、だけど一歩一歩噛み締めながら、絶望という箱の中でも少女たちがそれぞれの希望を失わずに戦えるような音を目指しました。私自身泣きながら作りました。そしてこれを作って阪田さんにプロジェクトデータを送ったその夜に胃腸炎になりました。
後半にはテーマ曲も入っていて、阪田さんのヴァイオリンが本当に美しく歌ってくれました。それが美しく響く中で、木管楽器や金管楽器がその命を優しく抱き上げるように入っていたり。
キャストさんたちの演技、最高でしたね…瞬きできませんでした。
F2P the STAGEの景色づくりについて。
遠藤先生、マルイノ先生、柚木先生、田邊さん、そしてお客様が大切にされているものが一体何なのかを私なりに巡らせながら、まほいくの世界をごくごく飲み込みながら、時に舐めながら(アルマちゃんです)、作らせていただきました。
まほいくの音楽を作らせていただくのは朗読劇含めて今作で3作品目なのですが、今回は朗読劇版との違いを出すために、普段メインで使っているピアノをできるだけ使わずに、全体的に楽器数も多くして厚みを出し、私と阪田さんでオーケストラ編成で編曲しました。
また、今回はもう一つ大きな挑戦があり、阪田さんに戦闘曲の作編曲をお願いしました。彼女には、ファン・リート・ファンは二胡をはじめ中国の楽器を、エイミーは琴や尺八、太鼓をオーケストラ編成の中に組み込む、ということをお願いして、あとはモチーフと雰囲気をお伝えして、お任せしました。
彼女との音づくりで個人的にいちばん盛り上がったのは、阪田さんにヴァイオリンで二胡(中国の楽器)のアプローチができないかと相談したところ、「これはまほいくだ!」というとても美しい演奏データがすぐに送られてきて。本当にすごい人だなと思いました。
クレジットに名前こそ載っていないものの、私と同じ景色を見つめながら大切に作ってくれました。心から感謝しています。
音楽を作る上で大変だったのは、まほいくの世界は本当に広く深く濃い…ので、制作していてどんどん透明さを失っていくし、リセットできなくなってくる。その泥の沼に沈んでいく感覚が、とても怖くて。けれど、途中からそんな状況を徐々に客観視できるようになってきて、そこからその中に咲く花の美しさを必死でなんとか見つけるように、ひたすらに獲物を狩り続けるように…そんな感覚で音を選び続けていました。
今作の制作を通して、阪田さんと桑原さんのおかげもあり、自分なりの器の磨き方がやっと見えてきたかも、と感じました。
これからも、心をめいいっぱい響かせて、大切に作っていけたらと思います。
本当にありがとうございました。
おまけの話。
もし楽器やコードを鳴らせるアプリをお持ちの方がいましたら。
朗読劇のスノーホワイト育成計画のコードはF#m、double shadowは Fm。そして今作はテーマはFmですが、お話が始まってからはDmが多めになりました。
もしまほいく舞台の音楽を思い出したくなったら、FmかDmをジャーンと鳴らしてみてください。ちょっと匂いが出てくるかもしれません。
ありがとうございました。
小林未季